前の劇団の座長に会ったせいか、
色々思い出す。
劇団ではパンと自主練は禁止されていた。
自主練とはこの場合、一人で練習すること。
だから劇団では、通しの前でもホール入りしてからも、一人で台詞を繰っている人はいなかった。
練習したくてたまらない新人は、相手役の空き時間をつかまえるのに必死だった。
稽古好きなK君と組んだ日には、いつでもどこでも練習に付き合わされて大変だった。
K君はホールに入っても、発声代わりに前の芝居の台詞を練習していた。
それがモニターから聞こえてきて、彼の記憶力の良さに笑いながら感心したものだった。
芝居は相手あっての物種。
一人で作ると、相手の動きや返し方も一方的に想定してしまい、実際やってみた時、相手と噛み合わなくなってしまう。
うまい言い回しよりも、その瞬間の気持ちが大事。
台詞をブツブツ言うのが許されるのは、一人芝居や台詞覚えのためだけ。
他にもピアスとか、霊の話も禁猟区だった。
劇団にはそれぞれ独特の掟があるけれど、それなりに理由があるのだ。
なぜパンが禁止されていたのか?
これはまたの機会に。