ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

八文字屋さん

図書館の知人に連れられて、八文字屋さんへ。
京都の木屋町に昔からあるバーである。
その昔、友人がアルバイトしていた。
彼女が心細がって連絡をよこすので、そのたび、私も行ったものである。

マスターは写真家のKさん。
美しい女性を写真に撮って、「美人365日」という写真集を出版しておられた。
友人は撮られていたけれど、私は一度も撮られたことがなかった。
あれから友人もアルバイトを辞め、私も何年も足を踏み入れていなかった。

店内は相変わらず汚なかった。
本が積み上げられ、椅子はガタガタしている。
昔はネズミも走っていた。
出されたおつまみを戴くのも躊躇する感じ。

でもこの汚さが魅力なのか、文化人が集ってくる。
水上勉さん、野際陽子さんも来られたらしい。
井上章一さんにはよく会った。

マスターに「久しぶりに来ました」と言うと
「君は、30代中頃か?」と聞かれた。
その言葉で、写真を撮ってもらえなかった恨みは帳消しにしようと思った。