ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

幽閉

私が小学校時代を過ごした茨木市には、塔が立っていた。
50階分くらいはあろうかという、巨大な円柱である。
オレンジと白のシマシマで、フジテックと書かれている。

幼い私には謎の物体だった。
煙突にしては太すぎる。
マンションにしては窓がない。
太陽の塔と比べると高すぎる。

大きくなって、フジテックはエレベーター屋さんだと知った。
あの筒は、研究塔なのだ。
毎日毎日、あの中をエレベーターが上がったり下がったりしているのだ。

世間でエレベーターがお騒がせしているので、ふと思い出した。
日常何気なく使っているものが狂うと、恐ろしい殺人マシーンになるなぁ。

事件のあったマンションは23階建てらしい。
亡くなった高校生は本当にお気の毒だ。
殺人機になったエレベーターのおかげで、上の階の人達もさぞかし不便だろう。
倫敦塔に幽閉されているエリザベス1世のような気持ちか。
家族が下へ降りる時は「アレとコレ買ってきて」と買い物を頼まれている事だろう。

宅配ピザ屋さんは悲鳴を上げているかもしれない。
繁盛するのはいいが、階段で上り下りはかなりツライに違いない。
陸の孤島というか、空の孤島やね。