私が小学校時代を過ごした茨木市には、塔が立っていた。
50階分くらいはあろうかという、巨大な円柱である。
オレンジと白のシマシマで、フジテックと書かれている。
幼い私には謎の物体だった。
煙突にしては太すぎる。
マンションにしては窓がない。
太陽の塔と比べると高すぎる。
大きくなって、フジテックはエレベーター屋さんだと知った。
あの筒は、研究塔なのだ。
毎日毎日、あの中をエレベーターが上がったり下がったりしているのだ。
世間でエレベーターがお騒がせしているので、ふと思い出した。
日常何気なく使っているものが狂うと、恐ろしい殺人マシーンになるなぁ。
事件のあったマンションは23階建てらしい。
亡くなった高校生は本当にお気の毒だ。
殺人機になったエレベーターのおかげで、上の階の人達もさぞかし不便だろう。
倫敦塔に幽閉されているエリザベス1世のような気持ちか。
家族が下へ降りる時は「アレとコレ買ってきて」と買い物を頼まれている事だろう。
宅配ピザ屋さんは悲鳴を上げているかもしれない。
繁盛するのはいいが、階段で上り下りはかなりツライに違いない。
陸の孤島というか、空の孤島やね。