ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

ご飯のおばちゃん

ほとんど毎日、お昼を食べている食堂がある。
私の体の1/3は、ここの食材でできていると言っても過言ではない。
決しておいしいわけではない。
一度など、かじってみると、冷凍のままのアジフライだった。
ただ、近くて安いのだ。

カフェテリア形式のそのお店には、大きな声のおばちゃんがいる。
ご飯をよそってくれるのだが、毎日通ううちに、私の好みを覚えてくれた。
「ご飯SSサイズやね?」とか「今日は玄米あるよ」など。
食欲のなくなる夏は、「うな丼はどうえ?」など相談にも乗ってくれる。
米飯だけでこんなに会話をできる人も珍しい。

でもそのおばちゃんは、声が大きいゆえに苦情も寄せられていた。
「唾がご飯にかかって不潔」と投書されたこともあり、
マスクをしたり、手袋をしたり、おとなしくなってしまった時もあった。

そのおばちゃんが秋頃、ふといなくなった。
「『ごはんは~?』のおばちゃんはどうしたのですか?」と投書があった。
「体調を崩して休んでいます」と回答されたが、
年が明けても戻ってこない。
春になって
「Mさんにあいたい」という投書があった。
「Mさんは定年で退職しました」と回答された。

そうやったんや。
食堂が、がぜん寂しくなった。
おばちゃんがいなくなってから、こんなに反響があるんよ。
できれば本人に知らせてあげたいなぁ。

そして私は何年かぶりに「SSお願いします」というところから始めている毎日です。