引越しの話が好評なので、もうひとつ。
3人集まれば、どうして演劇っぽくなるのだろう。
引越し屋さん、真剣なだけにとても面白い。
コンちゃんと呼ばれるドンくさい人が混じっていた。
コンちゃんは、布団袋の紐を結ぶのにも手間取っている。
「コンちゃん何してんねん、ちゃっちゃとやれや」
などとリーダーに叱られている。
荷物を運ぶ時に的確な所にいないので、
「コンちゃん」「コンちゃん」と、
ペットのように呼ばれている。
一度、リーダーと2番手がトラックを移動させに行った。
コンちゃんと私、二人っきりになった。
コンちゃんに電話がかかってきた。
「荷造りやっとけよ」と言われたようだ。
「はい。はい」と電話を切って、机に筒状の布をかぶせにかかった。
一方の足にかぶせ、対向の足にかぶせようとすると、
どうしても布がずり上がってしまう。
何度もトライするが、全体にうまくかぶさらない。
諦めて台所にこもってしまった。
冷蔵庫を拭いてくれているようだ。
今日は長いよ。
リーダーが帰ってきて、机に手際よく布をかぶせ、
「コンちゃん」と呼んだ。
「はい」と台所から返事。
「ううん。呼んでみただけ」とリーダー。
冷蔵庫を降ろす時も、コンちゃんは上で渡した後、
下のヘルプに降りてきたけど、間に合わなかった。
引越しは実質2人でやってもらったようなものだ。
今日そんな話をすると、
「コンちゃんはスカブラや」とAちゃんが教えてくれた。
筑豊の炭鉱で、まったく働かず時間ばかり聞きに行く
スカブラと呼ばれる人物がいたそうだ。
だが、彼がいないと皆、仕事が長く感じられたという話。
コンちゃんも、何かの役に立ってたんかなぁ。
きっと本名は近藤さんって言うんやろなぁ。