ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

黄昏の商店街

図書館へ本を返したついでに、S商店街へ足を向ける。
ここには祖父が営んでいた乾物屋があった。
店の中はいつも昆布と鰹節の混ざったような匂いが立ち込めていた。
子供の私には不可解な匂いで、あまり居心地のいい場所ではなかった。
でも後を継いだ叔父さんはお年玉をたくさんくれたし、
隣には大きいおもちゃ屋もあったので、お正月に行くのは楽しみだった。
今は叔父も亡くなり、建物は人の手に渡っている。

商店街はすっかり様変わりしていた。
子供の頃の記憶を頼りに訪ねてみたが、商店街を突き抜けてしまった。
おもちゃ屋の跡形さえない。

父に電話する。
父「角に自転車屋があるやろ?」
私「ないよ。『魚忠』って魚屋があるよ」
父「なに?『オキュウ?』」
私「ちゃう、”魚”と”忠義の忠”!」
父「流儀の”流”?」
私「ちゃうちゃう!タチツテトのチ!!」
ついつい大声になる。

そこへ店から人が出てきた。
話しながらたどり着いていたのは、まさにその店だった。
中の構造はちっとも変わっていなかった。
「わ、ここや!」と思わず叫んでしまった。
色々丸聞こえやったやろなぁ。
そのまま知らん振りして通り過ぎたけどね。
商店街は急にセピア色になって、少年時代の父が
「何?野球の球?」
なんて言いながら出てきそうな気がしたよ。

*写真は、帰りを待つ橋弁慶山の町会所です。