終戦の日を前にして、夏に訪れた美山の宿を思う。
玄関口に「殉国誉れの家」と書いてあった。
ここは民家を一軒貸してくれる宿。
立派な神棚があり、掛け軸にも天照さんの文字が見えた。
さぞかし、きっちりしたお家だったのだろう。
この家から兵隊に行って、戻らなかった息子かお父さんがいたんやなぁ。
部屋に寝っ転がって、この天井を見たかったやろなぁ。
虫の声を聞きながら眠りたかったやろなぁ。
報せを受けた母親もお嫁さんも、つらかったやろなぁ。
宿泊して穏やかな時間を過ごしながら、色々な想像が駆け巡った。
「誉れ」という表現が、また悲しい。
でも忘れてはいけない記録である。
改装の時にこの札を遺しておいた大家さんは、正しいと思う。