ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

殉国誉れの家

終戦の日を前にして、夏に訪れた美山の宿を思う。

玄関口に「殉国誉れの家」と書いてあった。

 

ここは民家を一軒貸してくれる宿。

立派な神棚があり、掛け軸にも天照さんの文字が見えた。

さぞかし、きっちりしたお家だったのだろう。

 

この家から兵隊に行って、戻らなかった息子かお父さんがいたんやなぁ。

部屋に寝っ転がって、この天井を見たかったやろなぁ。

虫の声を聞きながら眠りたかったやろなぁ。

報せを受けた母親もお嫁さんも、つらかったやろなぁ。

宿泊して穏やかな時間を過ごしながら、色々な想像が駆け巡った。

 

「誉れ」という表現が、また悲しい。

でも忘れてはいけない記録である。

改装の時にこの札を遺しておいた大家さんは、正しいと思う。

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