ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

寺山修司と百年の孤独

ごまのはえ氏の「寺山修司百年の孤独」講座を聞きに、伊丹AIホールへ。
ガルシア・マルケスの小説『百年の孤独』と
寺山修司の舞台版『百年の孤独
寺山修司の映画『さらば箱舟』
を比較して、最終的には
ニットキャップシアターの舞台『さらば箱舟』
の質問コーナー。

南米大陸の「マコンド」という村の開拓者ブエンディーア一族のエピソードが
どんな風に寺山の作品に取り入れられたのか。

登場人物が「タネ」「ハタケ」など日本風土を意識したネーミングになっているとか、
コロンビア先住民の「遺骨を家の下に埋める」という風習を取り入れているとか、
小町娘レメディオス(純粋少女)が寺山作品ではテマリとなって、家出少女の如き人間臭さが感じられるとか、
最後、写真撮影をすることで100年を一瞬にして閉じ込め、マグネシウムの煙にしてしまうとか
原作にモデルのないエピソードを列挙したり
どんだけ研究しとるね~ん!と突っ込みたくなるくらい
いやはや興味深く聴いた。

ニットの作品は、寺山を味方にしながらマルケスに挑む気持ちで作ったらしい。
原作を一層ずつはがして丹念に観察し
新たな原型を作って一層ずつ塗り重ねた
漆塗りみたいな作品だったのね。

現代演劇レトロスペクティヴというシリーズで発表されたこの企画。
ただ単に文学作品を立体化しただけではない。
演出家のとらえ方や劇団員の「こう見せたい」という意識のはっきりした舞台。
観劇者としても文字だけでは感じられない体験や感情を呼び覚まさせる、良い機会になりました。