ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

手すりの光

先日の同窓会で、数学の恩師にお会いした。
その先生は、犬の狆(チン)に似ていたので、陰で「チン」と呼ばれていた。
同窓会でAが「わぁチン先生!お久しぶりです」
と大きい声で言ったのでヒヤッとした。

私たちは中学時代、”静和館”と呼ばれる建物で授業を受けていた。
チンは授業で
「この静和館が取り壊される時には、
ぜひとも手すりの丸っこいところを貰い受けたい。
女子学生が長年にわたってこすり続けたこの手すりは、
一朝一夕には成り立たない光を放っているからです」と力説していた。

静和館は、その後、建替えられたらしい。
今では冷暖房完備の近代的な建物になっている。

手すりの丸っこいところの行方は定かではないが
チンは在りし日の静和館の写真を配ってくれた。
その中に、手すりの丸っこいところの写真もあった。
なるほど、深みのある光を放っている。

20年前の私も、この光に手を加えたのよ。
美しさだけではない、色々な思い出がこみ上げてくる写真である。