患者図書室で借りた、杉浦日向子さんの『うつくしく、やさしく、おろかなりー私の惚れた「江戸」』(筑摩書房 2006)によると
江戸人が好んで口にする自嘲は「人間一生糞袋」というタンカらしい。
食べて糞して寝て起きて、死ぬまで生きる。
入院していると「お通じはありましたか?」「ガスは出ましたか?」が、
通りすがりの挨拶となり、自分も糞袋であることを実感する。
でも患者図書室に足を踏み入れた途端、みるみる潤うのを感じる。
世界の歴史、珍しい虫の図鑑、美しい風景、生命科学の謎、作詞家の伝記、江戸文化、物語…たくさんの知りたいこと、読みたい本が次々に現れる。
糞袋に背骨がニョキニョキと生えて、シャンとした。
オアシスみたいに、知性や感性が生き返りました。