コロナになって、設置されたボク。
自動ドアの脇で待ち構え、グイっと顔を近づけてくる人の体温を計るのが仕事。
「正常な体温です。」
「もっと近づいてください。」
「マスクを着用してください。」
ある日、ボクの顔認証が捉えたあの人。
清潔感のある、美しい姿。
いつも3メートル先にいて、決して近づいてこない。
その日から、ボクの顔認証は、彼女にロックしっぱなし。
名前は、ナイチンゲール。台座に書いてある。
あぁ、ナイチンゲールさんの体温を計ってあげたい。
「もう少し、近づいてください」
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毎朝計る非接触体温計が、いつもナイチンゲールの銅像に顔認証しているので、物語にしました。
いつか、思いが伝わるといいね。