ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

椰子の浜辺の「蛍の光」

今公演中の”NEXTのコックピット”は戦場の一兵卒の話である。
参考になるかな、と「椰子の浜辺の『蛍の光』」という本を手にとってみた。
知り合いのお祖父さんが自費出版した自伝小説だ。
家に遊びに行ったときにもらったのだが、今まで本棚にしまい込んだままだった。

おじいさんが召集されてハルマヘラというインドネシアの島に派遣された時の体験談が書いてあった。
仲間がほとんど戦死して、食料も炎上し、敵の空襲に脅かされながら生き延びた頃だ。
野生の芋を栽培し、椰子の実で椰子油を作る。
椰子の実を取るのは危ないので、現地人の力を借りる。
現地人、最初は警戒していたが、だんだん仲が良くなった。
それまで占領していた白人はいばっていて、現地人と話す時、自分は椅子に掛け、彼らはひざまづかされたそうだ。
日本兵は同じように椅子を勧めて、対等な立場で話をする。肌の色も似ている。人種差別をしない。
それで親近感を持ってくれたらしい。
椰子酒を作り、竹笛を鳴らして宴会を催す仲になった。
ある日まさかの敗戦を迎え、引き揚げ船で帰る事になった。
現地人が岸辺から、それまで一度も演奏したことがなかった「蛍の光」を演奏してくれて、涙が止まらなかった、という話だった。

私も涙が出るくらい感動したが、
土人がなぜこんな歌を知っていたのか・・・」という文で
「おいおい」とつっこみを入れた。
おじいちゃん、それ、人権差別の言葉やで。