この秋、蔵書点検を行うため、図書館地下にある電動書架の上層にこもった。
ここには大正~昭和51年に受入れた古い図書を配架している。
たまたま私が担当したのは軍事医学の分野。
戦争に関する生々しい書籍が息を潜めている。
鈴木三蔵『図解 空襲と救護』(三重出版社, 1944)という本で、手が止まった。
この本の序には
『日本軍の強さは敵前三十米にある。一億一丸となってこの烈々たる気魂を昂揚し・・・』
などと書いてある。
内容は空襲に襲われた際の創傷、骨折、火傷、溺水、毒ガス等に対応する
止血法、三角巾の使用法、人工呼吸法、傷者運搬法などの図解と説明である。
物資の少ない中、雨戸や湯たんぽ、副木を使い懸命に命を救おうとする切迫した絵図に、
空襲の恐ろしさ、悲惨さを改めて感じる。
・・・と書きつつ、実際のところ、蔵書点検をしながら釘付けになったのは、
治療されている兵隊さんのふんどし姿だったのは、ここだけの話である。