ひめ日記3

日詰千栄の日々を綴ります。芝居のこと、祇園囃子のこと、京都のこと。

ウンチョスの木

父が亡くなってから葬儀までの間、
親戚がひっきりなしに家を訪れてくれ、とてもありがたかった。
が、皆が困った事があった。
トイレが流れにくいのだ。
一旦、あふれるかと思うくらい水がたまり、
少しずつ吸い込まれてはまた出てくる。
これはいつか溢れるんじゃないか?
誰しも(私の番ではありませんように)と願いながら流していたと思う。

葬儀を終えて家に帰り、
疲れているはずの母が一番に取り掛かったのはトイレの修理だった。
トイレの排水口を奥までつつくと、葉っぱのようなものが出てきた。

母は「千栄ちゃん、外に来て」と言い、合羽を羽織った。
小雨模様の空の下、
庭のマンホールを開けると
おびただしい量のトイレットペーペーが浮かんでいた。
それをスコップでかき分けると、
おそらく色んな人の、大量のウンチョスが現われた。
腰の引ける私に対し、母は何かが憑いたようにまだスコップでかき分ける。

次に出てきたのは、根っこだ!
木の根が網の目のように張り、マンホールの穴がふさがれていた!

根っこはコンクリートの壁を突き破り、栄養分を探してここにたどり着いたのだ。
宝の川を見つけ、こんなになるまではびこったのだ。

これでは固形物は流れない。
衝撃の事実に、私は度を失った。
どうすればいいのか、見当がつかない。
ただ「ウンチョスが・・・!ウンチョスが・・・!」
と叫んで家の中の妹と義弟に告げた。

母はひるまず、スコップの先で根っこを切り落として行った。
そして「千栄ちゃん、バケツを持って来て」と言い、がっさりそれらを移した。
「母は強し」と実感した瞬間だった。

マンホールにしのび寄った木は、
私と妹夫婦によって「ウンチョスの木」と名づけられた。
肥やしを吸収し、よっぽど生き生きしているかと思ったら
ところどころ枯れていた。
父のおしっこには、薬が交じってたからかなぁ・・・。

おかしくてちょっと苦い思い出だ。
写真の木とは、関係ありません。
モチモチの木」とも関係ありません。
お食事中の人には、すみませんでした。