昼間、よくすれ違うおじいさんがいる。
カンカン照りの夏の日も、ザンザン降りの雨の中も、ビュービュー凍える寒さでも
澄んだ目をして、ブツブツ言いながらヨロヨロ歩いている。
おそらく徘徊しているのだ。
思わぬところで出会ったりするので、
毎日ものすごい距離を歩いていると思われる。
そのおじいさんの服装が、お洒落。
ある日はシャーロックホームズのような探偵風。
鹿撃帽にインバネスコート。
ある日はヒップホップ風。
野球帽を後ろ前にかぶり、Tシャツと短パン。
ある日はヒッピー風。
ポロシャツをベルボトムジーンズにイン。
ある日はチャーリーブラウン風。
腰にミッキーマウスの人形をぶら下げている。
よくまぁこれだけ凝れるなぁと思うほどバラエティに富んでいる。
暑い日はペットボトルを首からぶら下げていることもある。
多分、毎朝誰かに着せてもらっているのだろう。
「行ってらっしゃい」と送り出す家の方がいるに違いない。
と思っていたけれど、先日
「袋をくれ」とカウンターにやって来られた。
「はい」とその辺りにあった適当な紙袋を渡すと
「これじゃだめだ」とおっしゃる。
「じゃあ・・」と、探してビニールのしっかりした物を渡すと
「ありがと」と持って行かれた。
やはりご自分でもこだわりがあるみたい。
きっとその日のファッションで歩いている景色も違うんやろなぁ。
ここまでくると見かけない日は心配になるくらい
毎日すれ違うのが楽しみで仕方がない。