私が咽喉の調子が悪かったのには、他にも理由がある。
寝不足だったのだ。
家に帰れなかったのだ。
友人の結婚パーティーの日、夜2時半。
私は正装のままドアの前で立ち尽くしていた。
家の、鍵がない。
出かける時は、階下のお店が開いていた。
大家さんが
「いってらっしゃい。シュークリームを戴いたから冷蔵庫に冷やしておくわ。
帰ったら食べてね」と送り出してくれたのだ。
私はパーティーのことで頭がいっぱいで、うっかり鍵を持たずに家を出てしまった。
あぁ、ドア一枚向こうには、マイルームが待っているのに。
1階の冷蔵庫にシュークリームがあることも知っているのに・・・。
そこへ、お隣さんが出てくる。
「あ、こんばんは」と、挨拶する。
何より、一刻も早く頭のセットをほどきたい。
ワンピースを着替えたい。
ストッキングを脱いで濃いメイクを落としたい。
電話するが、大家さんは留守番電話。(真夜中やもんね~)
またお隣さんが帰ってくる。
「あ、どうも・・・」
不審な人だと思われているに違いない。
たまたま起きていた近所のA嬢に電話がつながった。
「助けて。ヘルプ~」
A嬢は「30分待ってください。部屋を片付けるから」と言い、
家なき子を迎えてくれた。
ありがとう。恩に着ます。
速攻で、借りた部屋着に着替える。
ローソンで購入したお泊りセットでメイクを落とす。
あとは、トーク・トーク・トーク。
気がついたら夜が明けていた。
Aさん、お世話になりました。
あの朝、窓から見た高原のような景色は忘れません。
持つべきものは、お友達やね~。
無事に帰れた部屋でシュークリームを食べながら、しみじみ思ったのでした。