お誘いをいただいて、貸し切りの焼き鳥屋さんに足を踏み入れると、おっちゃんが30人くらい、いらした。
某立ち飲み屋さんの常連客の忘年会だとか。
「初めまして」と、挨拶し合う声も時々聴こえる。
「塔南高校の野球部出身なんや」
「僕は西京高校の野球部です」
「私はゴスペルを習っていました。いいですよ~」
「わしの娘は、オーストラリア人と結婚したんや」
「僕は、舞踊のキュレーターをしていたよ」
「去年は東寺の反対、西寺跡が発掘されたんです」
「BSのイタリアの番組はおもろい」
ワイワイワイワイ色んな方の、色んな人生を聞く。
そのうち「落語を聞かせてくれ」という声が上がって、30人が鎮まる。
いやいや、無理ですよと言いながら、引くに引けず
『大阪の仲のええ二人組、喜六と清八がお伊勢参りの旅に出てまいりました』
と始めると、皆さん、熱心に聞いてくださる。
ニヤニヤしたり、腕組みしながら聞いたり、すごい空間になってきた。
『小池村と吉村がある』と言うと「東京と大阪やな」と合いの手をはさんでくる。
キリのいいところで切り上げると、「その続きはどこで聴けるんや」とか「情景が目に浮かんだわ」とか「知り合いの寺でやってもらえへんか」とか、口々に反響が。
その後、オカリナの演奏もあった。
私の席の向かいに来て、自分の小唄を披露してくれる方も。
聞くところによると、この忘年会は、常連でもなかなか誘ってもらえないらしい。
「わしは13年目でやっと誘われた」というおっちゃんもいた。
楽しくて不思議な夜でした。